HOME » 強迫性障害について

  強迫性障害とは、実質的には意味がないことだと分かっていても、自分の意に反してあるこだわりのあることが頭から離れず強迫的な考えが繰り返し浮かんできて抑えようとしても抑えることができない(強迫観念)、またそのような考えを打ち消そうとして無意味な行為を繰り返し(強迫行為)してしまう症状のことです。

 強迫性障害の人は独特のこだわりがあります。 だれしも こだわりがあるのは普通のことですが、強迫性障害の人は 自分自身が設定した 「こだわり」に従属的に支配されているといったイメージで こだわりをコントロールすることができなくなり、逆にコントロールされ続けているといった感じなのです。趣味や嗜好といった楽しいこだわりではなく、その「こだわり」を維持できなければ、とたんに 恐怖感、不安感にさいなまれるような気がしてしまうような「こだわり」なのです。 また 強迫性障害の人には 比較的長い暇な時間や自由な時間が大敵なのです。時間があれば、この「強迫観念」=「こだわり」に支配されやすくなり、とたんに 不自由な時間となることがしばしばあります。 強迫性障害の人は フリーな時間を あいまいに過ごすということが 苦手なのです。

  もともとの性格とも関連性が

もともと几帳面(きちょうめん)、完璧主義などの性格(強迫性格)の人に多い傾向があるため、それが単なる性格の範囲なのか、病気であり治療の対象になるのかなどは微妙なところで 本人が自覚して、医療機関へ相談へ行ける場合を除き、家族や周囲の人が判断しなければならない場合もあります。

 常に「こうしなければならない」といった状態から抜け出せず、強迫観念からくる「強迫行為」によって日常生活を送ることが難しい状態になってしまいます。強迫行為は強迫観念から生み出されるわけですが、強迫観念の真髄は「もし○○だったろどうしよう」「「万が一○○だったら どうしよう」などと 考えられる 最悪の事態をまず優先的に考え、その考えから開放されないということです。最悪の事態とは事故や事件のもととなる不注意を察知しようとするようなものから、複雑な人間関係で、自分に不利益が及ぶ可能性や自分が不利になるシチュエーションまで考えるなど、常に、不必要なほどに 先に先に考えを及ぼし、先回りして対処しようという異常な思考パターンです。強迫観念には大まかに次のように分類されます。

■ 不潔強迫:潔癖症と言われるもので、手や体の汚れが気になり、何度も何度も繰り返し洗わないと気が済まない。自分が「不潔」だと思うものに触れることができない。

■ 確認行為(確認強迫):家の鍵やガスの元栓などを閉めたか気になり、しつこいほど何度も確認を繰り返す。車の助手席に乗っている場合など 周りの車、歩行者の状況を運転手以上に察知し、運転中いちいち、運転手に注意を呼びかけるなどの行為もあります。 この場合のように、自分でいちいち確認するのには 時間的にも肉体的にも限界がありますが、周りの人を巻き込んで、確認する、訪ね続ける、場合周りの人の精神的負担は大きく、周囲がその異常にきずきやすくなります。

■ 縁起恐怖(縁起強迫):宗教的、社会的に不道徳な行いをしてしまうのではないか、してしまったのではないかと恐れる。

■ 数唱強迫:縁起の悪い数字、例えば4は「死」を連想するので、日常生活でこの数字に関するもの全て避ける。
■ 加害恐怖:自分の行動によって、他人を傷つけたり危害を加えてしまうことを異常に気にする。実際にはなにもないのに無意味に考えすぎる。何らかのサービスを受けた場合、すでに支払い済みか無料のサービスなのに、対価はいくらか確認して支払おうとする行為=支払い延滞、滞納に対する恐怖



原因と治療

強迫性障害の原因として考えられるのは、ドーパミンやセロトニンの不足から脳内の神経伝達物質がバランスを崩し発症すると言われています。その人の性格の問題であるとか心理的や環境的要因と今まで考えられやすい場合が多いとされてきましたが、患者の脳内物質の検査を行ったところ、上記のような状態が多く見られたということです。
このようなことから、環境によって脳機能の異常から脳内の神経伝達物質もバランスを崩してしまったという方か適しているのかも知れません。

   そして、強迫性障害をもつようになることと、以前の性格とは因果関係があるとは照明されていはいませんが、おおよその傾向として、以前の性格としては、几帳面、融通が利かない生真面目、完璧主義などが多く見られます。
治療は医療機関などでは 精神科 心療内科などで行われ、お薬による治療としては大きく 次の3つのタイプの精神薬が用いられます。

  • SSRIなどの 抗うつ剤
  • 三環系の抗うつ剤
  • 抗不安薬

  強迫行為を無理に制止しようとしても

強迫行為を無理に止めさせようとしても まず簡単にはいきません 。こだわりや頑固さ、融通の利かなさがあるからです。制止させられることで より不安感、恐怖感、そして、制止した人との間にあつれきが生じます。うまく、別のことに関心をそらせることで、一次的に強迫観念が頭に浮かばないようにします。物事にとらわれやすいという性格を利用すれば、相手の関心のありそうなことを わざと、提示することで、目の前の今 障害になっている観念を一時的ですが、休止させることができる可能性があります。

 

  うつ病との関係

うつ病の症状というと、不眠、落ち込みがひどり、やる気がでない、楽しめない、イライラする、自殺衝動などがあり、強迫性障害(強迫神経症)とは イメージが多少ずれますが、共通の部分もあり やや 誤診されやすい場合もあります。しかし、うつ病が 心にかかる 大きなストレス あるいは 小さくても長くかかってくる 構造的なストレスの結果 うつ病になることを考えれば、強迫性障害で 自身の思考パターン、行動パターンに 自身が疲れてしまい、大きく、構造的で持続的なストレスがかかることになります。 そういった意味で 強迫性障害 → うつ病  または うつ病 → 強迫性障害というように 2つの病を同時にかかったり、それぞれから 他方に移行したりすることもあります。治療薬をみると、うつ病の場合と強迫性障害の場合では かなりの部分が共通であることからも 両者の病気は互いに関連あるといえます。

  認知行動療法

認知行動療法とは 認知療法と行動療法が統合された治療法で、アメリカで開発されたものです。認知療法は その人の考え方や認識の仕方(認知)に焦点をあて、極端な考え方や認識の仕方(認知のゆがみ)の修正をはかりながら 問題点を解決していく方法なのです。 一方 行動療法は 不適切な行動は誤った学習の結果であるという考えから、徐々に適切な行動の割合を増やしていけるように、再学習を行っていくものです。この2つの治療法をのよいところをとって統合させたのが 認知行動療法なのです。 両者のバランスをとりながら、認知と行動の両者を徐々に改善していくことを目指しています。
■ 認知のゆがみの例としては
二分割思考(両極端な思考) 過度の一般化(ものごとを公式的にあてはめ 常に(特に悪いこと)決まって出来事がおこされると考えること 破局形成(いつも最悪の事態を想定)感情的決め付け(理由もなく、~にだろうと決め付ける) 恣意的推論(十分な根拠もないのに 悲観的に推論)否定的予測(ささいなことから否定的な予測をする) 自己関連付け(自分は誰から見られているという感覚)過度の責任感(不具合や事故が起こると自分の責任において何かすべきだったと考える)すべき思考(何かをするとき絶対に~すべき、と考える 拡大視、縮小視(あることを極端に大きく考えたり、逆にささいなことだと感じたりする) 低い自己評価 (自分がやっても他人より劣った結果しかだせないという考え)

強迫性障害の治療では、薬物療法はほとんどの心療内科、精神科のある病院でも受けることができますが、認知行動療法は強迫性障害を熟知した精神科医や心理士がいないと受けることができません。

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