HOME » 脳のストレスホルモンと神経伝達物質

扁桃体の役割

   強く、継続的なストレスを受けつづけると うつ病になるといわれています。そのメカニズムはどのようなものでしょうか。うつ病は 人それぞれの環境要因があり ひとくくりでは言えない面も多いのですが、その大きな要因として、脳内のメカニズムの障害という いわば 生物学的な原因があるという報告もあります。その中で 特に 関連を指摘されているのが「扁桃体」という場所です。扁桃体(へんとうたい)は 脳の側頭葉の内側の奥にあり、攻撃行動や恐怖反応、情動的な記憶といった、もともと原始的な活動をつかさどる部分です。扁桃体が活動すると、恐怖や不安、悲しみの感情を生み出します。 強いストレスを受けると、この扁桃体が活発に働き、いわゆるストレスホルモンともいわれる、コルチゾールを分泌して ストレスに適応しようとします。しかし、強いストレスを長期間受け続けることで、ストレスホルモンが過剰に分泌され、その結果、脳の神経細胞を修復、活性化させる働きのある「脳由来神経栄養因子(BDNF)が減り、脳の神経細胞が萎縮します。このことにより、意欲や行動の低下をまねき、うつ病になると考えられます。


シナプスと神経伝達物質

シナプス
ニューロン(神経細胞)どうしの接合部を「シナプス」といいます。シナプスの末端ではさまざまな神経伝達物質が放出され、次の神経細胞へと取り込まれていきます
神経伝達物質
うつ病や統合失調症などの 多くの精神疾患には 神経伝達物質の影響が関連しているのではないかといわれています。 また 降圧剤(高血圧の薬)などを服用している人に うつ病などが発症しやすかったことから、うつ病の抗うつ薬は 高血圧の薬がセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどを減らす作用があったため、これらの神経伝達物質を 増やしたり、減らすなどの効果のある作用のある物質 抗うつ作用をもつ物質として、抗うつ剤などが開発されてきました。 下記に 主な神経伝達物質とそのわかっている働きを示しました。すべての神経伝達物質は 50種類以上あるといわれていますが、その働きが、多少なりとも判明しているのは わずかです。そのうちの一部ですが、よく、働きが解明されていたり、抗精神病薬 抗うつ薬、睡眠導入剤が 作用する相手の 神経伝達物質を下記にあげています。
主な神経伝達物質
セロトニン 脳全体に分布し、多くの神経系をコントロールする役割を果たしている。この物質が多くなると、気分を落ち着かせたり、平静を保ったりしやすくなる。
ノルアドレナリン 脳全体分布し 精神的緊張を担う。不安や恐怖を引き起こしたり、気分を高ぶらせたり、注意力を上げたりする。
ドーパミン 意欲を担う物質といわれる。欲求や好き嫌い、行動の動機づけなどに関わる快感や達成感を生じるといわれる。分泌が過剰になると、幻覚や幻聴を起こすと言われる。
アセチルコリン 脳を覚醒を担う物質言われ、記憶や学習などに深く関わる。
GABA 神経を抑制させ、不安を鎮める作用があるといわれるため、睡眠導入剤などでは この作用によって効果が現われるものが多い。
グルタミン酸 神経を興奮させる働きがある。神経の情報伝達の基本を担う。記憶や学習にも深いかかわりがある。

抗精神病薬、向精神薬、睡眠導入剤がターゲットにする神経伝達物質

抗精神病薬
抗精神病薬の場合 幻覚、妄想、興奮状態などの陽性症状に対処することを目的とします。これらの症状に関与している物質として、ドーパミンが知られていますから、当然、多くの抗精神病薬は このドーパミンの働きが過剰にならないように、抑えることを作用としてもっているものが多くなっています。
抗不安薬
ベンゾジアゼピン系抗不安薬の場合、不安や緊張を和らげる目的があり、それが作用です。「GABA」と呼ばれる物質が関わっています。GABAは中枢神経系を抑制する、代表的な脳内神経伝達物質なのですが、ベンゾジアゼピン系薬物にはGABAの脳内作用を増強する働きがあります。したがって、ベンゾジアゼピン系薬物がGABAの働きを強めることで、覚醒しすぎた脳内の活動がスローダウンし、それが心の不安、緊張を和らげることになるのです。
睡眠導入剤
ベンゾジアゼピン系のお薬は、抗不安薬と睡眠導入剤とで重複しており、抗不安薬としておなじみのお薬であっても、睡眠導入剤としてよく使われるものが多数あります。例 デパスなど したがって 抗不安薬と同じく ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤では GABAの脳内作用を増強する働きがあります。他に オレキシンという神経伝達物質に作用して脳の覚醒を抑制して寝付き易くする新薬(2014年)のベルソムラや 過去に主流となっていたバルビツール系の睡眠薬でもGABAに作用するが、鎮静効果の選択性が少なく、効果も大きいため呼吸などや栄養吸収などの正常な機能にまで及び、その危険性、毒性のために 特別な場合を除き、使用されることは極めて少なくなっています。

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